ピロリ外来について
ピロリ菌とは
ピロリ菌は近年、胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因の一つと考えられています。
正式名称を“ヘリコバクター・ピロリ”と言い、ヘリコとは「らせん状」という意味で、バクターとはバクテリア(細菌)、ピロリとは胃の出口で十二指腸へとつながる部分(幽門)を意味する「ピロルス」というラテン語の単語から来ています。この菌は胃の幽門部から初めて見つかったのです。
ピロリ菌の最も大きな特徴は、酸素の存在する大気中では発育しないことで、酸素にさらされると徐々に死滅していきます。
大きさは約3μm(マイクロメートル)で、4~7本の鞭毛(べんもう)を持ち、この鞭毛を高速で回し、その回転力で胃の中をドリルのように進み、移動します。
ピロリ菌が強酸性下の胃の中で生育できるのは、胃の中にある尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニアで酸を中和することにより、自身の周囲の酸をやわらげているからです。
1.ヘリコバクターピロリ菌に感染していると起こりうる病気
ヘリコバクター感染胃炎から消化性潰瘍、胃MALTリンパ腫、胃ポリープ、機能性胃腸症(FD)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、胃がん等
2.検査しておいた方がよい方とは
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の既往
胃癌の家族歴
ピロリ感染を指摘された家族がいる方
胃バリウム検査でC判定以上を指摘されたことのある方
3.ピロリ菌の検査方法
- 血清ヘリコバクターピロリ抗体、便中ヘリコバクターピロリ抗原、尿素呼気試験、ABC検診等
4.治療
- 1次除菌
- 2次除菌
除菌にはプロトンポンプ阻害薬(胃酸の分泌を抑える薬)と抗生物質を1週間服用します。
プロトンポンプ阻害薬で胃酸の分泌を抑えておいてから抗生物質でピロリ菌を除菌します。
服用終了後から約1ヶ月後以降に除菌療法の効果の判定を行います。
この方法による除菌率は、わが国では70~90%と報告されています。
胃がんとピロリ菌
ピロリ菌に感染すると胃粘膜が炎症を起こし、胃の痛みや不快感、吐き気を伴う慢性胃炎や胃粘膜の組織が消えてしまう萎縮性胃炎へと進んでいきます。この萎縮性胃炎は「前がん状態」と言われ、胃がんの発症リスクが非常に高い病態です。そして日本人の胃がんの99%にピロリ菌が関与していることがわかってきました。胃がんの発症を防ぐ意味でも、ピロリ菌の除菌が推奨されるのです。